こども王

こども王 第15話「第13章」

朝はまだ冷たかった。城の裏路地から差し込む光は、石畳の目地に溜まった埃を金色に縁取るだけで、部屋の中まで暖かさを運んではくれない。テーブルの上には開いた領収帳、古い写本の束、そして小さな紙片が何枚も重なっていた。額の肖像画は、相変わらず淡い笑みを湛えながら、だが確かに昨日よりだけ年をとって見える――額縁に刻まれた細い線が、ほんの一日分深くなっていた。

朝はまだ冷たかった。城の裏路地から差し込む光は、石畳の目地に溜まった埃を金色に縁取るだけで、部屋の中まで暖かさを運んではくれない。テーブルの上には開いた領収帳、古い写本の束、そして小さな紙片が何枚も重なっていた。額の肖像画は、相変わらず淡い笑みを湛えながら、だが確かに昨日よりだけ年をとって見える――額縁に刻まれた細い線が、ほんの一日分深くなっていた。

「今日、したいことはね」とリクは言った。声は低いが、迷いはなかった。「年齢を『動かす』仕組みの出所を突き止める。ここで見つかったものを、城下の全部屋と学校に持って行くんだ。どうやって若さが書き換えられているのか、その証拠を示して、大人たちに隠せない形にする。」

隣で書類をめくっていた教師のサナが顔を上げ、眉を寄せる。彼女は四十近いが、労働でついた細かな皺を正面から受け止めるようにしていた。「記録室は厳重よ。宰相の直轄部署とも言えるところ。入るだけで色仕掛けの嘘を吐きかけられるわ。」

「それに」――城で通訳と経理をしているセルが口を挟む。冷たい指先で古い印影を指差しながら、「年齢台帳は年ごと、町ごとに分かれている。改竄するなら相当巧妙にやらないと。何より危ないのは、僕たちが向こうの罠にかかることだ。記録の内側には、外に出せない『帰り道』がある」

机の向こうにいるのは、城下の学校から来た子ども代表のアルだ。彼は集中してメモを取っているふうで、まだ指先にインクの痕が残っていた。アルは九歳。年齢だけで言えばリクより下だ。リクはその事実を何度も思い直し、言葉にしないまま指先で紙の端を押さえた。

「僕、行きたい」アルが言った。声は細かったが、決意はあった。「あの書類がどうしてああなったのか、ちゃんと知りたい。学校の子が、知らないうちに使われてたなら、僕は黙ってられない。リク王子、僕にもさせてよ。」

リクはアルの顔を見た。目の端に浮かんだ小さな赤い跡、数日前の訓練で転んだ時の傷跡がまだ癒えていない。彼がかつて児童相談員だった頃に見た表情と同じ種類の固さが、そこに宿っている。リクは唇を噛んだ。彼の能力について、同じ間違いを繰り返してはならない。子どもから無理に願いを引き出すこと――それは禁忌だった。

「アル」リクは静かに言った。「君の意志で、君が自分で出した言葉で、そう決めるなら――僕は君の願いを、王令として一日だけ形にできる。でも、注意して。願いを誘導したら、王令は暴走する。僕の年齢が一日進む代償は、僕だけのものじゃない。僕が、その日を失うたびに、この国の絵もずれていく。君自身がそれを望むのか、僕は聞きたいんだ。」

アルは目を伏せて、しばらく黙った。部屋には、誰もが息を飲む時間が落ちた。窓の外で誰かが水を運ぶ音が聞こえ、遠くで市場の初声が始まった。

「僕は……」アルはゆっくりと言った。「僕は見つけたい、誰が僕らの字を使ったのか。そうするなら、僕の言葉でやりたい。誘導なんてされたくない。だけど――」唇が震える。「でも、リク王子がそれで歳を取るのは、嫌だ。僕は、それを受け取れないよ。」

その答えに、リクの胸は沈んだ。アルの純粋さが痛かった。彼自身、王令を使うたびに一日ずつ年を失っていくことを知っている。肖像画はそれを裏付けている。だが同時に、記録の根幹に触れる必要は明白だった。年齢を「据え置く」技術が、もし国家の制度として組み込まれているならば、個人の願い云々では済まされない。何千もの子どもが、知らないうちに日を奪われているかもしれない。

「じゃあ使わない」リクは決めたように言った。「今日の調査は、僕の力には頼らない。君たちの目と手、帳簿と記録、それが証拠になる。僕が年を進める代わりに、大人を動かす。ここにいる全員で、年齢を奪う仕組みの設計図を出すんだ。」

アルは小さく頷いた。サナもセルも、黙って紙束に手を置く。窓の外の世界はまだ目を覚ましていく。リクは立ち上がり、肖像画の前で一瞬手を止める。額縁の細い線を指でなぞると、そこに残るわずかな塗装のはがれ目が、過去の一日一日の重みを想像させた。

城の年齢台帳室は、武器庫の向かいにある地下通路の奥にあった。表向きは戸籍と成人式の準備をする官庁で、王家の儀式と密接に結びついている。通路の入り口には、古い石の亀裂に埋め込まれた金属の錠があり、そこには幾つもの印章が重なっていた。セルが小声で鍵を鳴らすと、古い機械のような音がして、錠がゆっくりと開いていった。

室内は予想以上に冷えていた。壁一面に並んだ棚には、折り畳まれた布片のように古い台帳が積まれている。紙と皮の匂いが混ざり合い、時の沈黙が空気を満たしていた。セルは懐中灯のような小さなランプを取り出し、ページをめくる。数字と印影、役人の手書きの注釈が整然と並んでいた。

「ここだ」サナが小さく呟いた。ページの端に、汚れた黒い墨の断片があった。子どもの字のように見える。先端は不規則で、同じ文字の繰り返しがあった。リクはすっと手を伸ばし、その断片を指で拾い上げた。紙の繊維は古く、触れるとぼろりと細い繊維が崩れた。

「この字、見覚えがないか?」セルが言った。「城下の学校で見つかった『子どもの字の戦争宣言』の筆跡と一致する。だけど、ここにあるのは書式化された申請書の一部だ。役場の決裁印が押されるように、最初からテンプレートとして用意されてたらしい」

アルは顔を白くして言った。「つまり、子どもの字に見えるように、わざと子どもの手で書かれたものが――?」

「その可能性が高い」サナが続けた。「ただの偽造じゃない。テンプレート化して、各地区の役人が同じ様式で『目録』に挿入していた。表向きは『自発的な申し出』の形をとるけど、実際は役人が作り、子どもの名前をなぞるだけで済む。批判をかわすための偽装だ」

「もっと酷いのはこれだ」セルが別の帳簿を持ち上げる。古いページの縁に、微細な数列が鉛筆で書き込まれている。リクはそれを覗き込み、息を飲んだ。数列は日付のようであり、同時に肖像の小さな番号と一致している。日付の隣には薄いスタンプ――王室の小さな紋が押されていた。

その時、サナが声を低くした。「ここに書かれているのは『年齢の補正』だ。子どもの申請が入るたびに、訂正を記録する欄がある。だが、その訂正は単に年齢を記すだけじゃない。『補填』と書かれている。日数が、どこかへ移されているような記述だ」

リクの指先が冷たくなった。記録の行をなぞると、ある地域名と、同じ日の肖像番号の連なりが見つかった。そこから先は、彼がこれまで抱えていた不安が線となって結びつく瞬間だった。肖像画の一日ずつの進行。それは単なる呪いのような象徴ではなく、記録上の「補填移動」と連動している。子どもの年齢がどこかへ「移される」時、肖像がその荷を受けて年を取る。あるいは、王室側が日を管理する装置にリンクしている――その考えまで到達するのに、リクは長い呼吸を要した。

「年齢そのものが、行政的な資源になっている」セルが静かに言った。「分配と消費の対象に。若さが戦力として計算され、帳簿に移される。まるで穀物みたいに」

アルが顔を歪めた。「それは、僕たちの時間を奪うってこと?」

「そうだ」リクは言