虫使い

虫使い 第25話「第23章」

空は切り立った石造りの広場を淡く照らしていた。石畳のひびには風が吹き込み、人々の声が渦を作る。中央には大きな台座があり、そこに今、王弟バルドの印が押された、まっさらな木箱——蜂箱が無造作に置かれている。箱は白木で、つやもなく、ただ四つの金具が光る。王弟の紋を焼き印した皮札が側面にぶらさがっている。演出用の雅楽が遠くで鳴り、王の使者が礼服の裾を翻している。見物の列にはバルド派の旗と、噂を聞きつけて集まった市民の顔が混じる。

空は切り立った石造りの広場を淡く照らしていた。石畳のひびには風が吹き込み、人々の声が渦を作る。中央には大きな台座があり、そこに今、王弟バルドの印が押された、まっさらな木箱——蜂箱が無造作に置かれている。箱は白木で、つやもなく、ただ四つの金具が光る。王弟の紋を焼き印した皮札が側面にぶらさがっている。演出用の雅楽が遠くで鳴り、王の使者が礼服の裾を翻している。見物の列にはバルド派の旗と、噂を聞きつけて集まった市民の顔が混じる。

ミオは人混みの端に立ち、小さな手提げをぎゅっと握っていた。手提げの中には、村から持ってきたもう一つの蜂箱——中は空っぽで、角に泥の跡と蟻の腹まで見えるほどの痕跡が残されている。箱の底には、同じ刻印が押されていた。箱を抱えながら、ミオは今したいことをはっきりとくり返した。公開の場で、これを示す。それが単なる「贈り物」だと見せかける舞台を、証拠の舞台へ変える。請願するのではなく、市民の場で審判を開かせる——市民自身が判断する場をつくる。

「ミオ、行けるか?」と言ったのは、隣に立つトールだった。肩に塗られた木炭の線は彼の手際の良さを示す。トールは村の若者の一人で、夜通し箱を運ぶ役目を買って出てくれた。頬に泥を残し、目は疲れているが鎮まっている。向こうには、都の学者セラが、書類の束を抱えて眉を寄せている。市の支持者である彼女は、役所の応答を受け取って重要な箇所に線を引いたり、指を鳴らしたりしている。

「無理はしないで」とミオの声に、群衆のざわめきが少し震えた。だが彼女は震えを隠せなかった。耳の奥にまだ残る三日の静寂の記憶が、鼓膜の陰影のように寄り添っている。白蜂の羽が欠けた重さも、胸の中でカチカチと音を立てる。女王を失ったあの日の匂い——焦げた蜜と煮えた草の匂い——がときどき襲ってくる。あのときの代償を思えば、彼女は慎重であらねばならなかった。能力は万能ではない。命令だけで虫を動かすことはできず、強制すれば群れは散る。女王を失えば三日間、自分は音を聞けない。人の声を共同で作ることを、この身は約束してきた。

演説台ではバルドの使者が低い声で語り、箱を見せた。「王弟が民への配慮として箱を送った。補助具の一つだ」——声は厳かで、それだけで多くの市民の眉が解ける。バルド派の者たちは拍手を始め、いかにも都のためという調子で話す。だがその拍手に混じって、村人たちの静かなうなりがある。ミオは視線を集めず、小さく首をふった。

「まず証拠を示します」と、セラが前に出た。彼女は箱の一つを台座の脇にゆっくりと置いた。箱の蓋は外され、底を見せる。泥の縞、蟻道の痕、それを指で辿るセラの指先の動作は、熟練の技師のように正確だ。群衆の中で、幾人かの者が顔をしかめる。バルド派の役人が抗議の声を上げる。「これは演出の一部だ。盗難の痕跡ではない!」

その声に、遠くで誰かが笑いを含んだ息を吐いた。トールが言葉を続ける。「盗難なら、なぜ村ごとに同じ焼印の箱が空に戻ってくる? それに箱の中からは、採取された樹脂の匂いが抜けている。人が掻き出した跡だ。蟻の列は、そこに埋められた残渣——隠された穴の方向を示している。」

ミオは箱の角を指で押さえながら、小さな取り出し方を示すように片手を伸ばした。蚂蚁の糸のように続くはっきりとした二列の跡が、箱の底板を横切っていた。トールの声は低いが確実だ。市民は一瞬、空気の重さを嗅ぎ取った。

「我々はただの村人ではありません。井戸を見てください」トールの隣で、若い女性のナリが一枚の古ぼけた地図を広げた。彼女は井戸の周囲に繁茂する蟻の活動を記録した図を示す。井戸の周りを回るように縫い付けられた印が、蟻の行列を追って延びる。セラが声を足す。「この蟻の経路は、地下へ通じる小さな坑道の存在を示す。そこには樹脂や地下水の層がある。過去に都の手で埋められ、掘り返された痕跡がある。」

そのとき、群衆の前方で小さな羽音が立った。誰もが上を見やる。ミオは息を整え、深く小さくうなずいた。手提げから取り出したのは、彼女の世話した小さな群れの一箱。中には白い羽が欠けた一匹も含まれている。群れは箱の縁を這い、いっせいに飛び立った。

だがミオは指一本で命じたりはしない。命令で動かすのは禁忌だ——群れは散る。彼女はやり方を変えた。手拍子が必要だった。村で教えた通り、彼女はリズムを作り、仲間たちがその手拍子に合わせる。これはかつての世話の延長だ。調法だ。彼女は群れに知られている拍子を打つと、羽音がその拍子に絡んで規則的な模様を描く。羽音の模様は「短い言葉」だが、それだけで十分だった。ミオの能力は、その模様を不安や危険、あるいは簡単な語として紡ぐ。

群衆の一角に立っていた「観測読者」数人が反応した。彼らは村の警報網の訓練を受けて都に来ていた。羽音を聞き取り、目に見える動きで隣の者に伝えた。頭を振り、眉を寄せて、そして声に出して言った。「羽音が示している。『空』——『取り上げられた』だ」

その短い言葉が広場に落ちると、ざわめきが一気に広がった。バルドの使者が前に出て、手で羽音を払うように振ったが、蜂は彼の動きに動じなかった。群れは舞い、短い弧を描いて空中で円を描き、やがて箱の上に整然と降りた。蜂の群れは箱の縁に止まり、わずかに震えた翼で「恐怖」を鳴らす。ミオの心の中で、女王の存在のことが一瞬ざわめく。彼女は自分の手元で女王を何度も確かめる。今日、女王は箱の中だ。喪失の恐れはあったが、今はこの場で代償を犯す時ではない。

「見てください!」と村の長老ハナが叫んだ。彼女は杖を握り、声が震えながらも強かった。「この箱は空だ。誰が入れたのか。誰が採ったのか。王弟の紋があれば、それは許可の印なのか——それとも命令の印か。箱が空であったのは、貴方たちが取り、持ち去ったからではないのか!」

そこへ一人、都から来た水質検査官が前に出た。彼はセラの指示で呼び寄せられた。彼の手には小さなガラス容器がある。中には井戸の水と、掘り返した坑道の泥を溶かしたものが入っていた。灰色の沈殿が見える。検査官は真剣な顔つきで証言を始め、「ここには異常な樹脂の成分が含まれる」と繰り返した。都の外郭で働く者たちの顔色が変わる。セラはその結果を記録し、公文書の形式で提示した。都の支持者の一人がそれに目を落とし、そして顔を上げた。

「我々は会議を要求する」と、ある市民が叫んだ。彼は小さな紙切れを掲げ、署名の列を示す。署名には都の商工会の者、教会の代表、庶民の代表が並んでいた。賛同の波が広がる。演出のために並んでいたバルド派の人間が一瞬動揺を見せる。舞台は逆に民の場へ移った。

バルドの使者は怒りで顔を紅潮させた。「これは陰謀だ! 箱は贈り物だ! 王弟の慈悲だ!」声は高いが、以前ほどの力がない。民の中には貧しさのあまり、手にした箱が何をもたらすかを計算した者もいる。だが今、箱が空であるという事実が、彼らの疑念に油を注いだ。誰もが目で確かめられるものを欲していた——それはただの演説では覆せない。

ミオは静かに歩み出した。箱に近づき、手を伸ばす。白蜂の群れが一瞬、羽を震わせる。彼女は声を低めて言った。「これは、単なる贈り物ではない。村の労働と水