山寺の台所の炊事係は役に立たない時間を守る
役に立たない時間を、台所で守る。
あらすじ
澪は山寺の台所で飯を炊き、道具を手入れする日々を送る女性だ。彼女の所作はただの掃除ではなく、触れた器や道具に使い手の疲労を一度だけ「見える形」で浮かび上がらせるという、静かな力をもつ。しかしその力には代償があり、使いすぎれば澪自身の眠りと力が奪われる。外からは効率化や計測を持ち込む行政や業者が近づき、台所の「役に立たない時間」を数にしようとする圧力が高まる。澪と住職や手伝いの人々は、村の暮らしと休息の場を守るか、外部の条件を受け入れて持続を選ぶか──日常の手触りと共同体の選択が問われる物語。