文官の悪役令嬢は政敵と共同経営を始める

文官の悪役令嬢は政敵と共同経営を始める 第25話「第23章」

古文書を刻んだ紙片が風に舞った。四方を取り囲む石造りの広場に、白い紙吹雪のように文字の断片がちらつく。烏の群れのように声が飛び交い、木の台に置かれた厚い巻物はまるで呼吸をしているかのように震えていた。インクの匂いと蝋燭の煤。カトリナ・エルデンはそれに押されるように台の前に立っていた。左手はいつものように文官用の細い鋼のペンを握るが、その先端は今、震えを伝えていた。

古文書を刻んだ紙片が風に舞った。四方を取り囲む石造りの広場に、白い紙吹雪のように文字の断片がちらつく。烏の群れのように声が飛び交い、木の台に置かれた厚い巻物はまるで呼吸をしているかのように震えていた。インクの匂いと蝋燭の煤。カトリナ・エルデンはそれに押されるように台の前に立っていた。左手はいつものように文官用の細い鋼のペンを握るが、その先端は今、震えを伝えていた。

「皆、落ち着け。聞いてくれ!」

力を振り絞るように声を上げたのは、共同経営の相手になった――政敵だった男、アーヴィン・ヴァントだ。彼の声は広場のざわめきを切り裂き、数秒だけ静けさをもたらした。しかし沈黙は脆く、重臣バロクの支持者たちが沈黙を破るように前列を剥がし、書類を掲げて叫んだ。

「古い掟は神聖だ! 身分も恋の筋書きも順序が保たれねばならん! こんな読み替えなど許さぬ!」

彼らの叫びに輪ができる。顔を歪めているのは、ただ既得権を守る者だけではない。婚姻の羅針盤に翻弄された若い婦人、家名を守るために背負う義務を考える老執事、未来を奪われたと思い泣く青年たち。それぞれが理由を持っていた。カトリナはその顔を見渡すたびに胸の芯で何かが引きちぎられるのを感じた。彼女自身がかつて押しつけられた「断罪の役」を思い出す。それを他者に押しつけることは、もう二度としたくないはずだった。

「カトリナ、今がその時だ」アーヴィンは低く囁いた。彼の声に隠れた疲労は、彼を敵として、味方として知ってきた者だけに分かる。『共同経営』という奇妙な名の盟約は、二人をここまで引き寄せた。だが今、硬直した制度が最後の抵抗を始めたところだった。

巻物の上に置いた手帳から、彼女は小さな木札を取り出した。いつも左手の袖に隠していたそれは、彼女が「選択肢」を数え、保留するための私的な目印だ。しかしただの木片ではない。古い公文書を解する者のあいだで、寓意的に「見えざる選択」を表すものとして、彼女が幼い頃から無意識に持ち続けたものだった。掌の中で暖かく、境界のように丸く磨り減っていた。

「当事者全員の合意――それが私の読み替えの条件です」とカトリナは言った。声は屋外の冷気に吸われかけたが、台の上の巻物に触れたその指先に、彼女自身の意思が集中した。「ここにいる全員が、今ここで選べる場を持つと合意してほしい。強制はしない。決めるのはあなた方自身だ」

だが、合意を得るという言葉はここでは剣だ。前列の一人、金糸の刺繍を誇る婦人が顔を顰める。「合意? 私に選択の余地があったかしら。あなたは私を始めから設計図に入れていたのではないの?」

その嘆きに、別の支持者が嘲笑交じりに言った。「お前らが『選べる』だと? お前らの選択が私たちの秩序を壊すのだ。合意だと? 嘘だろう」

ざわめきが再び波立つ。合意の輪は欠け、声の端は怒りに変わった。カトリナは知っていた。条件を守れば彼女の術は力を発揮し、ここに新しい運営の理路を作れる。だが条件は揺らいだ。全員の合意など、この場では絵に描いた餅のようだ。時間はない。バロク派は移動を始め、台の脇で文書を奪おうとする者も現れた。演台を押し倒す恐れすらあった。

「やめろ!」メルヴィンが割り込んだ。大柄な元兵士は体を投げ出し、台の脇を守る。彼は自分の判断でそれをした。エイラは静かに台に膝をつき、巻物を抱え込んだ。セオは群衆に向き直り、ある古い婚姻記録を掲げた。仲間たちはそれぞれ、合意を「演出」するのではなく、目の前にある現実を示していた。彼らの行動はカトリナの決断を助けるための独立した選択だった。

だがそれでも足りない。硬直した制度側の代表、宰相代理ファルクの顎の線が鋭くなる。彼は国家の正式な印章――それは金属の棒に刻まれた市の紋章――を高く掲げて、冷たい声で言った。「ここで不正な読み替えがなされれば、国家はそれを認めない。無効だ。無効を宣言する」

宣言は広場に落ちる。人々の一部がそれに追随して叫ぶ。カトリナは手帳の木札を握りしめると、深く息を吐いた。選択肢が消えかけたとき、ある直感が彼女に囁いた。「ここで待てば、誰かが血を流す。合意なしの暴走を止める最後の方法は一つしかない」と。

彼女は台に上がり、巻物の端に指を置いた。聴衆は耳を澄ませ、アーヴィンの顔が真剣さで引き締まるのをカトリナは見た。合意は欠けている。しかし彼女は知っている――読み替えを行うには、意義ある当事者の署名が不可欠だということも。ここにいる誰でもない第三者の強制は、本来なら許されない。だが彼女は、合意の可能性を生むための「仮の法的効力」を起動する術を知っていた。術の核心は言葉の結び直しと、それを示す公印の在り方だった。

「私は――」カトリナは言葉を噛み砕くようにして続けた。「私がこの場で読み替えを執行する。ただしそれは暫定の効力に留める。実行のあとで三十日のうちに、各当事者は自己の意志を示す機会を得る。拒否があれば、その部分は原状に戻る」

その言葉に、ファルクが鼻で笑った。「暫定? そんなもの、公的効力を持とうはずがない。貴女は私的な術師か何かか」

笑い声が広がる。だがその瞬間、カトリナは木札を握る手にある変化を感じた。固く握った掌に違和感が走り、木片の縁に小さな亀裂が走る。彼女はそれを見た。亀裂が静かに走り、ひび割れから灰色の粉がこぼれた。彼女の胸がひんやりした。木札は彼女にとって、無限の選択ではなく「数えられる選択」の象徴だった。ひびの入った木片は一つの選択肢が消えたという合図だった。

「――これは?」アーヴィンの声が驚きを帯びる。彼はカトリナの掌をのぞき込み、そこにある粉を見つめた。カトリナは言葉にならない感覚を抑えた。術の代償はいつも抽象的に語られてきた。だがいま、目の前でそれが具体となった。彼女が合意なくして一方的に効力を付与するなら、彼女の中の「一つの可能性」は消える。何を失うのかは術が決める。だが消失は確かに実在する。

「構わない」カトリナは小さく呟いた。声には震えがあったが、決意は揺るがなかった。「場を開ければ、あとは皆が選べる。私が一つを失っても、それで誰かが選べるなら――」

言い終えるや否や、カトリナは指先で巻物の文言を一語一語、音にして読み替えた。古い語句の継ぎ目に新たな句を差し込み、合意の定義を拡張する。彼女の声が広場の空気を切り、文字が風に溶け込む。周囲の人々は無意識に息を呑み、蝋燭の火が一つ、二つ、揺れた。紙吹雪が彼女の周りに舞う。読み替えの術は、形式を変え意味を滑らせる作業だ。アーヴィンはそっと彼女の背中に手を置き、支持を示す。メルヴィンはまだ護る姿勢を崩さない。

その瞬間、ファルクの伴奏役であった書記が、古びた銀の管を打ち鳴らした。広場が静寂に沈む。官吏たちが一斉に出してきたのは――登録の印章であった。金属が石に触れる音は、重さのある制裁を告げる。書記は冷たい声で読み上げた。

「規定第三章、付則十二――当事者の全員合意なくして読み替えが為された場合、読み替えを行った者はその読み替えにより発生した場の『保管』と『執行』を一年間、無条件に負うものとする。加えて、当該者はその期間中、自己の運命に関する同種の読み替え権を行使できな