卒業制作室で成績優秀な落第生は一緒に休むことを覚える

卒業制作室で成績優秀な落第生は一緒に休むことを覚える 第27話「第二部幕間」

蛍光灯の一つが断続的にチカチカと瞬いた。夜の校舎は本来の音を失い、代わりに針金のような低いうなりが床に残っている。古い換気扇がときどき口を開けるように唸り、紙の匂いと乾いたのりの匂いが混じっていた。卒業制作室の中央、二つの作業台が寄せられ、その間に小さなインスタレーションが横たわっている。透はその片端に顎をつけ、まぶたを半分閉じたまま指先で角の紙をなぞっていた。

蛍光灯の一つが断続的にチカチカと瞬いた。夜の校舎は本来の音を失い、代わりに針金のような低いうなりが床に残っている。古い換気扇がときどき口を開けるように唸り、紙の匂いと乾いたのりの匂いが混じっていた。卒業制作室の中央、二つの作業台が寄せられ、その間に小さなインスタレーションが横たわっている。透はその片端に顎をつけ、まぶたを半分閉じたまま指先で角の紙をなぞっていた。

「まだ起きてる?」と蓮が言った。声は静かで、それでも室内の静寂に対してはっきりと輪郭を作った。蓮は内側にたくさんの紙片と糸を詰めた箱を抱えている。箱の蓋には、二人で切り抜いた星の形が薄く重ねられていた。その重なりのすき間に、蓮の息遣いが小さく溜まっているのが見えるようだった。透の指先はそのすき間を追っていた。

透がそっと紙の表面に触れた瞬間、蓮の輪郭が冷たい水面に映るように浮かんだ。疲れと不安が混じった息、夜になれば家に帰らないといけないという決まりごとへの苛立ち、そして作ることでだけ伝えようとしている「ただ、誰かと一緒にいたい」という希求。視界は色と温度で埋まる。紙の端は暖かく、糊の跡が乾いた皮膚のように見えた。

透はその感覚を言葉にしようとした。説明したくなった。蓮のことを確かめたくなった。だが彼はすぐに手を引っ込めるべきだという感触も受けた――触れれば触れるほど、にじんでいく。彼は急いで言葉を探し、代わりに心の中で結論を作った。「蓮は──僕が思うように、ただ疲れているだけだ」と。

その瞬間、接着剤で止められていた二枚の薄紙が、ほのかに裂ける音を立てた。小さなひび割れが光を食み、紙の繊維が白く浮き上がる。蓮の顔がぱっと揺らいだ。彼の胸の奥にひっかかっていたものが、突き放されたように反応したのが透にはわかった。蓮は箱を抱えたまま後ずさり、肩をすくめた。

「なに――今のは……」蓮の声は紙を裂く音にかき消され、頼りなさがそのまま言葉になった。

透は自分の胸に刺さる鈍い痛みを感じる。彼が「決めた」ことで、見えたはずの輪郭が薄れ、代わりに空洞が残った。手の中の感覚は風船から空気が抜けるように萎んでいく。視界の色味が薄くなり、頭の奥に冷たい針が差し込まれる。能力を使い過ぎるときにいつも来る、あの嫌な痺れだ。彼は短く息を吐き、慌てて両手を膝の上に置いた。汗が指先ににじんだ。

「決めつけないで」蓮の声が小さく震えた。「私、そういうことをされるの……嫌いなんだよ、透。作ったものに勝手に名前をつけないで」

透は言い訳をしようとして、言葉が出なかった。理由がある。安心したかっただけだ。だがその安心が、箱の中の星形を壊してしまった。蓮はゆっくりと箱を開け、裂けた紙の断面を指で押さえる。糊の層が乾いて白く粉を吹いている。そこに残った痕跡は、もう彼の触れた直後の鮮烈さをまとうことはなかった。

白坂まひるが扉を押し開けて入ってきた。明るい笑顔は、ここにある緊張を切り取ってしまうような力を持っているが、その目はいま二人の作業台に留まった。まひるはメモを片手にしており、その紙の端に学科のロゴが印刷されている。

「もう帰らないの? 遅い時間だよ」まひるは言って、すぐに真面目な顔に変わった。「それより、ちょっと。監督教授から連絡があってね——来週、全作品のデジタルアーカイブ撮影が入ることになったって。審査前の記録用だってさ」

その言葉は、水面に一つの石を投げ込むように場の空気を揺らした。アーカイブ用の撮影は、非公開で進めていた実験や、個人の事情で表に出したくない制作物をすべて露出させる。透は蓮の手から目を離すことができなかった。蓮はぱっと顔を伏せ、箱を胸の前にぎゅっと抱きしめる。

「撮影……」蓮の声は紙の破れる前よりも小さかった。「あれは、公表ってことになるんでしょ? 公開合評みたいに、誰かの感想で私たちが消費されるのが怖い」

まひるはコートの内側から一枚のプリントを取り出し、二人に向けて差し出した。そこには日時とカメラマンの名前、そして「製作過程の記録を含む」という一行が赤字で書いてある。透はその赤字を見ると、胸のあたりが冷たくなった。

「非公開の会を考えたのに」と蓮が言った。「それは……違う」

まひるは眉を寄せて、即座に視線を切り替えた。「でも、制度を動かすなら、その前に選択肢を整理しないと。全部出すか、隠すか、あるいは——出すけど、私たちの条件を付けるか。監督教授に口頭で申し入れしてみる、っていうのもある。誰か一人が勝手に決められることじゃないよ」

「……俺、もう一つ、やらかした」透は小さく息をつき、手に残る糊の粉を舐めるように見つめた。「触って、決めてしまった。蓮のことを、簡単に結論づけてしまった。あれで箱の一部が壊れた。戻らない」

蓮は一瞬、怒りを押し殺すように顔を上げた。その瞳は、透が最も見たくないほどに静かだった。「透、私たちが作るものって、『私』と『あなた』が重なってできるものなんだよ。勝手に線を引かないで。もしあなたがその線を引くなら、私たちの作業は壊れる」

言葉は簡潔だが重い。透は喉の奥で何かが鳴るのを感じた。彼は能力によって他者の輪郭を掬い取れるが、同時にその輪郭を固めれば固めるほど、脆い接合部を崩してしまうと知っている。しかも壊れたものは、触れられないところで色を失っていく。直前に見えた蓮の希求が、今や透の中で薄膜のように残り、触れられなくなっている。

まひるが深く息を吸った。「ここで選ばないと、外が決めちゃうよ。あの撮影はただの記録じゃない。あなたたちが望まない形で作品が切り取られる。外部の視線が入ると、噂と評価がもっと早く動く。私たちが準備する間もなく、人格がタグ付けされる」

一瞬の沈黙の後、蓮がゆっくりと箱の蓋を開けた。中にはいくつかの小さな部品が乱暴に置かれている。裂けた紙、接着の跡、そして小さな付箋に書かれた短いメモ。「ここでは寝る」「帰らないで」を繰り返した跡。透はそのメモに触れたくてたまらなかったが、もう自制心が残っていないと自覚した。触れればまた、何かを決めてしまうかもしれない。

蓮はその小さな紙片を一枚ずつ指で撫で、そして台の上にそっと並べ替えた。まるで壊れたものを違う形で見せようとするようだった。

「私は、隠したいわけじゃない」蓮は小さく笑った。「ただ……私は、噂にされるよりも、話し合いたい。誰かにラベルを貼られるんじゃなくて、私たちの声で名前をつけたいの」

まひるは頷き、スマートフォンの画面を透に見せた。そこには小さな掲示板が映っている。学生課の連絡網だ。書き込みには「撮影日は変更されません。全作品対象」と冷たい一行が踊っている。まひるは指を滑らせて、その掲示板の下にある返信欄を指差した。

「私が提案するのは三つ。全部出す。全部隠す。もしくは、私たちの条件付きで一部だけ出す。ただし、条件が通らなければ、現状では撮影に応じないって意思表示を出そう。署名は集められる?」まひるの目は鋭かった。彼女はいつも通り、仕組みを変えるためには行動が必要だと考えている。

透はゆっくりと息を吸った。頭の中の針が痛みを増すのを感じるが、それでも決めるべきは自分だとわかっている。能力でなぞる