田園の駅で秘密主義の先輩は最後の夏を記録する
共同で残す痕跡と、失う記憶――田園の駅の夏。
あらすじ
田園の小さな無人駅を舞台に、秘密めいた“先輩”と高校生たちが「最後の夏」を写真や手仕事で記録しようとする物語です。彼らの持つ「共同で作ったものにだけ残る痕跡」を読み取る力は、人の気持ちや時間の断片を浮かび上がらせる一方で、使うたびに代償として記憶の一部を失わせます。外からは評定制度や再開発の動きが迫り、町や制度に記録を取り込まれる危機が繰り返し訪れる。仲間と手を合わせることでしか得られない温度や痕跡を、守るべきか公にするべきか──個人の選択と共同体の在り方が交錯する葛藤が物語の中心です。写真、木箱、掲示板、夜のろうそく並べなどの儀礼的場面と、記憶の代償をめぐる心理描写が読みどころです。