港の喫茶店で元恋人の友人は過去の誤解を解く
触れた手の跡が、港の記憶を呼び戻す。
あらすじ
港町の喫茶店を拠点に、葵は「共同で作られたもの」にだけ残る感情の痕跡を指先で感じ取る力を持っている。噂と評点制度によって分断された怜奈と直也の過去の関係──小さな共同制作に刻まれた断片を手がかりに、葵は誤解の起点を探ろうとする。だがその術には条件と代償がある。決めつければ痕跡は消え、急げば共同のかたち自体が壊れてしまう。葵は仲間たちとワークショップや展示を重ね、場を作って当事者たちに選ばせる道を選ぶ。港の光と木の匂いが立ち上る細部描写と、能力の倫理をめぐる緊張が読みどころの、静かに問いを立てる物語。結末の選択がどのような代償を招くかは、物語を通してじっくり見届けられる。