黒架図書航路のルシオラ
記憶と代価を抱えて、書架船は南へ進む。
あらすじ
焼け跡で見つけた台帳外の「黒い背表紙」を抱え、見習い司書ユト・アーヴェルは書架船ルシオラに乗り込む。台帳に載らない本は禁架とされ、開けば誰かの忘却を一つ失わせる──それでもユトは、紙の少女ミナと共に失われた記憶を返す旅を選ぶ。舵を取る元密輸屋ガロウや、黒架の監督官エルデらと対峙しながら、三人は雪原の収蔵所や旧中央館の深奥へと進む。 物語の焦点は、記憶を「守る」規則と、個人の歴史をそのまま取り戻すという倫理のぶつかり合いにある。索引眼で結び直される断片、合冊によって均される安寧、そして忘却を代価にする航路──ユトたちはどこまで代償を払って誰の声を取り戻すのかを突きつけられる。南方へ向かうルシオラの航跡が、さらなる謎と選択へと読者を誘う。