廃校体育館のロボット合唱団 第14話「エピローグ:終わらない歌」
それから数年後。 琴ノ浦町を訪れる人々は、必ずと言っていいほど、あの古い体育館に足を運ぶ。 そこには、世界でも珍しい「歌うロボット合唱団」がいるからだ。 しかし、人々を惹きつけるのは、珍しい機械だけではない。 そこで過ごす子どもたちの、生き生きとした表情。そして、建物全体から溢れ出す、何とも言えない温かな空気感だ。 陽菜は大学生になり、教育学を学んでいる。長期休みには必ず町に戻り、あの体育館でボランティアを続けている。 蓮は、父親の跡を継ぐ修行をしながら、ロボットたちのメンテナンスを一手に行っている。彼の手によって、ロボットたちは今も現役で、当時よりもさらに豊かな歌声を響かせている。 ある夜、
それから数年後。
琴ノ浦町を訪れる人々は、必ずと言っていいほど、あの古い体育館に足を運ぶ。
そこには、世界でも珍しい「歌うロボット合唱団」がいるからだ。
しかし、人々を惹きつけるのは、珍しい機械だけではない。
そこで過ごす子どもたちの、生き生きとした表情。そして、建物全体から溢れ出す、何とも言えない温かな空気感だ。
陽菜は大学生になり、教育学を学んでいる。長期休みには必ず町に戻り、あの体育館でボランティアを続けている。
蓮は、父親の跡を継ぐ修行をしながら、ロボットたちのメンテナンスを一手に行っている。彼の手によって、ロボットたちは今も現役で、当時よりもさらに豊かな歌声を響かせている。
ある夜、閉館後の体育館で、陽菜と蓮は二人でロボットたちの掃除をしていた。
「なあ、陽菜。覚えてるか? あの雨の夜のこと」
「忘れるわけないじゃない。私の人生が、あの日から変わったんだもの」
陽菜は雑巾を絞りながら笑った。
「あの時、あの子たちが歌っていた歌……今なら分かる気がするの」
「ほう、なんて歌ってたんだ?」
「『私たちはここにいる』。ただそれだけ。でも、それが一番大切なことだったのよね」
陽菜がそう言うと、十二体のロボットたちが、電源も入れていないのに、微かなハミングを始めた。
それは、陽菜と蓮、そしてこの場所に集う全ての人々の鼓動と共鳴する、終わりのない歌。
琴ノ浦の夜空に、星が輝き始める。
ダムの湖底に眠る記憶も、新しく植えられた苗木も、そして今を生きる若者たちの夢も。
全てを包み込むように、ロボットたちの歌声は、どこまでも高く、遠くへと響き渡っていった。
(完)