薬草師は判決を煎じる
名前と種を、湯気で煎じる物語。
あらすじ
久瀬律は、前世の法律家としての思考を抱えながらも、薬草と湯気で人々の言葉を取り戻すことを選んだ若き薬草師だ。灰棚の村では、救命の対価として採取した種子を永代納入させるという商会と王都の契約が住民を縛り、律は乳鉢と記録を手に交渉の場に立つ。彼の能力は、薬で人が自発的に名を語れば影に浮かぶ条痕を視ること──それは力で奪うのではなく対話を促す道具だ。廃鐘楼の「鐘守」や小さな魔獣モグ、剣士サラら仲間とともに、契約と生命のはざまで名字と種を守る選択を模索する。読みどころは、法廷的思考と治療の所作が交差する場面、緑がかった月光と湯気に揺れる条痕、そして名前を巡る倫理的葛藤だ。