余白を運ぶ地図師――迷宮国の荷車は、世界の綻びを結ぶ
運ぶのは荷物だけじゃない。名と帰り道を綴る、小さな荷車の仕事。
あらすじ
真壁透は前世で倉庫と配送を担った三十歳の男。王都とその地下を巡る“道”が、測路院の帳簿と不規則な三拍子に支配され、そこから人々の「名前」や帰属が溶けていく世界で、透は荷車一台に記録と人びとの声を積んで動き出す。古地図を抱える測量士のミレア、槍を携えたセナ、耳に敏い獣人のトトらと共に、崩れる石橋や逆さまの市場、呼吸する壁といった迷宮のような街路を渡り、消えゆく名を収める帳簿や針の謎に迫る。測路院の封鎖と長官の理屈が立ちはだかる中で、透は前世の職業的勘を頼りに、記録と人々の朝を守ろうとする――物流の手順と奇妙な魔性が交錯する群像譚。