火薬庫の継嗣
触れて設計する音が、記憶を代償に問いを残す。
あらすじ
穂積景は触覚で素材の“音の痕”を読み取り、共鳴箱や包材を用いて音の響きを設計できる青年だ。焼け跡の断片から母の歌の律動を拾ったことを皮切りに、軍や組合の監視をかわしながら仲間たちと共に実験と保護を進める。一方で、正式に合図を鳴らすたびに設計者の記憶が一片ずつ失われるという代償があり、その倫理と運用を巡って街は分裂する。市場と図書館、隠れ村、要塞や港を舞台に、断片の譜面と異素材の膜を巡る潜入と論議、そして公共化をめぐる駆け引きが描かれる。触覚的描写と音を“設計”する技術の緊張、仲間との絆と個人の喪失が読みどころ。