無音の剣、世界を奏でる
無音の余白を、誰が守るのか。
あらすじ
音が世界の仕組みを支配する王国。スタジオで他者の感情を“完成”させる作曲家・久遠律は、音の余白が誰かの何かを奪っていると感じ始める。一方で、聴覚を失った剣士ルカは、音が生まれる直前の揺らぎを読むことで刃を振るい、仲間の色を視る奏術士ミナ、壊れた楽器を蘇らせるガロ、声を封じられた王女セレネらと出会う。共鳴塔が街と人々の拍を一つに整えようとするなか、個々の拍(リズム)を守るか――統一された“救済”に身を委ねるかが対立の軸になる。音の有無をめぐる倫理と、視覚・触覚で描かれる異なる感覚世界、刃が切り取る代償をめぐる選択が読みどころ。物語は、失われる記憶や感覚の細部描写を通じて「余白」をどう扱うかを問う。