異世界転生雨傘職人の王都魔導師

異世界転生雨傘職人の王都魔導師 第22話「第20章」

朝日に縁取られた評議庁舎の石段は、いつになく人で埋まっていた。傘屋の布旗を肩にかけた市井の人々、泥だらけの屋台主、白髪の長老、役所の背広を着た市民代表──彼らの表情は期待と不安が綯い交ぜになっている。カイは、その群れの前で直立し、掌にある小さな鉄の箱を撫でた。箱の中には、彼が直してきた傘の鍵と、もう一つだけ、自分が「持ち主」として名を記した短冊が入っている。

朝日に縁取られた評議庁舎の石段は、いつになく人で埋まっていた。傘屋の布旗を肩にかけた市井の人々、泥だらけの屋台主、白髪の長老、役所の背広を着た市民代表──彼らの表情は期待と不安が綯い交ぜになっている。カイは、その群れの前で直立し、掌にある小さな鉄の箱を撫でた。箱の中には、彼が直してきた傘の鍵と、もう一つだけ、自分が「持ち主」として名を記した短冊が入っている。

「今日、ここで僕が見せたいのは、傘が魔法を持つからじゃない。誰が開くか、誰と話し合って順番を決めるか——それが守る力になるってことだ。」

ミラがそばで小さく頷いた。黒い頭巾を深く被った彼女は市場の果物屋を切り盛りする女商人で、カイの店に何度も傘を持ち込んでは修理を頼んだ一人だ。隣にいるボルムは鍛冶の男で、肩に鋼の粉が残っている。二人とも、自分の傘を用意している。長老ネサは杖で地面を叩き、目をぎらつかせていた。皆、それぞれの「守る対象」がある。屋台、子ども、商いの日々だ。カイはその顔を一つずつ見た。

「評議会は僕たちを分けて、雨を配るって言う。誰を選ぶかを空に任せるんだ。ここにいる誰も、それを望んではいないはずだろう?」カイの声は低く、それでも石段に届いた。周囲からは小さな同意の息が漏れる。だが、反対側の長いテーブルには評議長タシルらが座り、腕を組んでこちらを見下ろしている。彼らの目には興味と警戒、そして計算が泳いでいた。

「直した傘が作る安全域を、この場で見せてください。それだけでいいんです」とミラが言った。「そして、もし彼らが制裁をちらつかせるなら——ここにいる全員が、それに応える意思を示すこと。」

カイは深く息を吸った。今したいことは単純だった:傘を開くという行為を市民の合意と連帯の象徴にすること。だが妨げがあった。評議会は既に傘職人たちを「危険な潜在性」として監視しており、彼らの証明はいつでも弾圧の口実に変わる。何より重いのは、カイ自身の能力の条件だ。直した傘だけが働き、持ち主が自ら開くときだけ一粒の恐れを弾いて短い安全域を作る——その規則のせいで、彼一人で全員を救うことはできない。さらに、閉じた傘に頼ると、彼自身の記憶が濡れて消えるという代償がある。今日の場では、それが最悪の武器にも、最悪の詐術の材料にもなり得た。

「準備はいいか?」カイが問うと、ボルムが冗談めかして笑った。「お前の作った傘が本当に魔法を弾くなら、俺の腕の傷より先に屋台の布を守ってくれよ。」

右手に握った短冊を示し、カイは自分が名を記している傘の一つを差し出した。短冊は、持ち主がその傘を自分で開くときにのみ効力が発動することを示す彼なりの印だ。今日はそれを使って、傘を開く権利が全員の手にあることを示すつもりだった。だが、パフォーマンスにはもう一つの要素が必要だった──評議会が持ち出す「安全な実験」。彼らは人工雨の小粒を使って、市民の恐怖と反応を演出してみせようとしている。評議会側の技術者は、何か小さな銀色の滴を手のひらに載せて見せた。あれは精密な一滴の魔力雨で、触れた対象の最も深い恐れを紡ぎ出すと噂されている。

「ここで一つ、実演します」評議長タシルが冷たく言った。「直した傘がそれを防げるなら、防いでみせなさい。だが、覚えておけ、カイ。違法行為があれば処罰する。記憶を弄るような術があるなら、我々はそれも調べるだろう。」

その言葉には脅しが含まれていた。処罰、監禁、店の没収——カイはそのリスクを知っている。だが、逆に言えば、ここで失敗すれば、評議会は支配の正当化に使うだろう。カイは短く唇を噛んだ。

「よし。やるなら、順序だ。三人、僕が指名する。自分で開いてくれ。僕が傍らで合図を出す。開いた傘が、その人の一粒を弾く。僕は傍で見るだけだ。誰も閉じた傘に頼らないことを誓ってくれ。」カイは周囲を見回す。ミラ、ボルム、ネサがそれぞれに頷く。子どものアレンは手をぎゅっと握りしめた。彼らは、自分の傘を自分で開くと決めた。

評議会側の技術者は小さな銀の滴を取り出し、空中で指先に乗せた。滴は冷たく光り、周囲にわずかなうねりを生じさせる。タシルが冷笑を浮かべ、指先から滴を放った。滴は空気を引き裂くように落ちる。集まった群衆が一斉に後ずさる。

「いまだ、開け!」カイの合図で、三本の傘が同時に開かれた。ミラの赤い傘、ボルムの藍の傘、ネサが誇らしげに掲げた布張りの古い傘。それぞれの開く音が同時に鳴り、瞬間に、それぞれの傘の周囲で空気が震えた。滴の落ちる音が、誰の耳にもはっきりと変わる。滴はミラの前で一度揺らぎ、傘の縁で弾かれて粉々に砕けた。破片は蚊帳の埃のように散り、地面に消えた。次いでボルム、さらにネサの前でも同じ光景が起きる。三つの短い安全域が同時に生成され、その内側にいる人々の眼から、恐れの影が二、三秒、ゆっくりと引いていった。

歓声があがる。だが同時にタシルの顔に怒りの色が差した。彼は手を振り、兵士の一人に合図をした。兵士は歩みを進め、評議会の短い杖を掲げる。場が張り詰めた。

「トリックだ。彼らは合図を知っていたはずだ。あるいは妨害魔術だ。我々はただちに検査する」とタシルが宣言した。だがその言葉は群衆には届ききらない。人々は自分たちの目で見たことを信じている。カイの心臓が早鐘を打つ。これで引けば、評議会が勝つ。進めば、もっと大きな代償が待っている。

タシルは唇をきつく結び、評議会の答弁者メア少将を指名した。メアの顔は硬く、肩には軍服の切れ端が残っていた。彼女は短距離で展開できる散霧器を取り出し、威圧的にそれを高く掲げる。「この場での乱暴は許されん。もし彼らが他人の恐怖を操作するような術を使うなら、国家の安全に関わる。カイ、傘職人。君は自分のやり方を示すことはできるだろう。だが、その代わりに我々は、傘が人心を惑わす手段になっていないかを確かめる。閉じた傘を用いた試験も行う。」

メアの言葉は、にわかに焦点を変えた――「閉じた傘」についての挑発だ。群衆の中には、閉じた傘を用いるとカイの記憶が消えるという噂を恐れる者もいる。その噂は、評議会が撒いたものかもしれない。だが今、メアはそれを証明するかのように、閉じた傘を示した。カイは喉を鳴らした。彼は閉じた傘を使うつもりはなかった。使ってはいけない。だが、彼がここで逃げるなら、その噂は真実になってしまう。

カイは短く息をつき、箱の中の短冊を取り出した。彼はそれを外に向け、群衆に見せる。そこには、彼自身の筆跡で「カイ・傘職人——自分で開くを以て効力有り」と書かれてある。だがそれは今日のためのものだ。彼は思い切って歩み出た。

「僕は、ただの見せ物をするつもりはない」とカイは言った。「あの『閉じた傘で記憶が消える』という噂を払拭してみせます。だが、僕は言葉だけではなく、実際の代償がどれほどのものかを皆に示すつもりです。もし評議会が言うように、閉じた傘に頼ることが人の記憶を奪うなら、僕がそれを受けます──ただし、これは自分の意思だ。」

群衆のざわめきが大きくなる。ミラの顔が顔色を変え、ボルムは歯を食いしばった。ネサは手を口に当てた。評議会側の顔には不満が浮かんでいる。タシルは冷ややかに、だが興味を隠せない声音で