異世界転生雨傘職人の王都魔導師

異世界転生雨傘職人の王都魔導師 第19話「第17章」

朝の光が石畳を薄く温めても、市場の胸は冷えていた。張り出された布告は鉄の匂いのする言葉で満ちている——「臨時封鎖命令。公共安全確保のため当局は一時的に市場の営業を停止する」。見張りの兵士たちが、赤い紋の旗を棒に括りつけ、通りの入口を示す。商いを開いている店はまばらで、風に揺れる商品袋の音だけが、通常よりも空いて見える通路に鳴り続けた。

朝の光が石畳を薄く温めても、市場の胸は冷えていた。張り出された布告は鉄の匂いのする言葉で満ちている——「臨時封鎖命令。公共安全確保のため当局は一時的に市場の営業を停止する」。見張りの兵士たちが、赤い紋の旗を棒に括りつけ、通りの入口を示す。商いを開いている店はまばらで、風に揺れる商品袋の音だけが、通常よりも空いて見える通路に鳴り続けた。

「開けないでくれ」——声はカイの前に立つ女の子の手の上にあった。彼女は自分の小さな傘をぎゅっと握りしめていた。傘は薄紫の布で、先端に小さな小鳥の刺繍があった。穴はなかった。だが、彼女の顔には恐れが刻まれていた。

カイはハンマーを一回だけ握り直してから、糸巻き箱の蓋を閉めた。仕事台の上には、まだ湿った皮の布と、針の刃先にかすかな錆が浮いた道具が整列している。彼は店の前の路地まで顔を出し、兵士たちと布告の間を見渡した。

「リオラは来てるか?」商人連合の代表、イサーの声が向こうから届く。彼の眉はいつもより深く寄っていた。イサーは自分の顔で市場の秩序を守る男だ。だが今朝は、表情の端に疲れと不安が混じっていた。

「来る」とカイは答えた。声は平静を保っていたが、内側で彼の指先が軽く震えた。今彼がしたいことはただ一つ——市場の営業を続けさせるために、正式な手続きを踏んで封鎖命令を市民投票へ持ち込ませることだ。だが目の前の現実は厚い壁のように立ちはだかっている。兵士たちの命令は冷たく、評議会の影は長い。人々は恐れていて、何よりも自分の記憶を失うことを恐れている。カイはその恐れを知っている。彼の能力は確かに人々を守る力だが、条件は厳しい。直した傘だけが、持ち主が自ら開いたとき、持ち主の最も深い恐れを跳ね返す一粒の雨を弾いて短い安全域を作る。反対に、閉じた傘に頼れば、カイ自身の記憶が濡れて消える。代償は自分の歴史を削ることだ。だから彼は、どれほど喉の奥が焦がれても、閉じた傘を勝手に動かすことを避けてきた。

「リオラは執務室の裏に隠れている」遠くの屋根の向こう、評議会の後ろ通りから視線を逸らすように低い声がする。カイはその声の方へ歩いた。足元の黒傘が目に入る。穴の空いた黒傘。彼はいつも、修理の対象だけでなく、不穏の印としてそれを店の片隅に立てかけていた。今朝、その穴がいつもより目立って見える。

裏通りの戸口に立っていたのは、薄茶色の髪を無造作に束ねた女官、セラだった。彼女は評議会の書庫に出入りする者の一人であり、表向きは文書整理を任される無名の職だ。だがカイは知っている。セラは決定を動かす細部を見て、そこに市民のための隙間を探せる人間だ。

「カイ、時間がない」セラは周囲を確かめ、声を潜める。「封鎖命令は正当化されているように見せるための手続きだけど、書類は揃っていない。私が申立てを出せば、評議会は正式に議題を採る義務を負わされる。でもそれには、まず市民の請願が必要だ。商人連合の署名二百と、市民代表の請求が三つ。君たち市場側で数を揃えられるか?」

「揃える」カイの答えは短かった。だが彼の胸中は嵐だ。人々は恐れている。兵士たちは腕を組み、賃金を減らすという噂を撒いている。誰かが一つでも傘を閉じてしまえば、カイは代償を払わされる——忘却の潮が彼の思い出を洗い流す。だから、彼は暴力に訴えずに合法的な手続きを選んだ。だが合法とは、人の勇気と時間を要する。今の時間は少ない。

「私が代表で申立てを出す。だが条件がある」セラは目を逸らさずに続ける。「公開の場で正式に受理されれば、評議会は世論の前で対応を強いられる。だが君たちが市民の声を得るために動く間、兵は市場を閉ざす準備を進めるだろう。だから、署名は迅速に、かつ恐れを和らげるやり方で集めねばならない。君がいつもしている、傘と技術の配布――それを武器にしてはならない。あくまで市民の自発でなければ、後で評議会に『強制』と印象づけられる」

イサーが言った。「私たちには三日もない。密告が出始めた。昨夜も二人が兵に連れて行かれた。『公共の安全に反する活動』だと。彼らはまだ戻っていない」

「戻ってこないかもしれない」老女ハンナが、杖をついて現れた。ハンナは市場の記憶係だ。彼女は呟き、古い記録の断片を指先に置くように話した。「けれど、記録は力になる。あの子たちの名を、顔を、出来事を市民が覚えていれば、評議会は無視できない。記憶は私たちの武器よ」

ハンナの言葉は重い。記憶を共有することがカイたちの武器であるならば、カイは自身の代償を恐れないように人々を説得しなければならない。だが同時に、個々人の選択を奪うことはしたくない。彼は自分の能力を独占するつもりも、強制するつもりもない。修理技術を教え、その結果として誰が開くかは共同で決める――それが彼のやり方だ。

「我々は今日、三つのことをする」カイは声を低めて言った。「署名を集める。記憶を集めて公開資料にする。そして、評議会に申立てをさせる。リオラ、君の出番だ。文書は私たちがまとめる。だが…」カイは一度言葉を切った。「もし兵が突入してきたら、俺は傘で守りたくなる。だが閉じた傘を頼れば記憶を失う。だから、俺は直接の防護行為を極力避ける。代わりに、傘の開き方を教えて、本人が自ら開く選択をできるようにする。わかったか?」

セラはゆっくりと頷いた。「わかってる。だが覚えて。選択を促すために君の存在が必要だ。君がここにいることが、彼らの勇気を引き出す」

午前は緊密な時間だった。屋台を回り、カイは傘の布と針糸を手渡しながら人々に話した。言葉は平易で、押し付けがましくない。記憶喪失の話題に触れるときは、ハンナが傍らでゆっくりと古い記録をめくった。記録は、過去に評議会が天候を管理する名分で人々を分けた事例の断片を示していた。誰かがそれを読んで、顔をしかめた。誰かは隣の人にささやき、そして静かに紙に名前を書いた。

だが全員が賛成したわけではない。何人かの店主は首を振り、指先を布告に向ける。「監督に見つかったら、店を追い出されるぞ」と彼らは言った。自由を失うことを恐れて、声を上げられない者もいる。連帯は脆く、評議会は狡猾だ。噂によれば、封鎖は評議会の権限を拡大し、市民の移動を管理する一歩だという。封鎖が「安全のため」と名づけられるならば、抵抗は犯罪として扱われる。

午後になると緊張が増した。兵士の一隊が拡声器を構え、通りの中央で読み上げを行った。人々は足を止め、口をつぐむ。拡声器の向こう側からは、評議会が「秩序」を回復するために必要な措置だと繰り返す声が流れてくる。

「我々は選択を奪われていない。選択を取り戻そう」カイは小声でつぶやき、傍らに座る少年の目を見た。少年は先ほどの薄紫の傘を小さな手で握っている。まだ開こうとしない。恐れが彼の胸を固くしていた。

カイは自分の修理の手を少年の傘に添えた。「君が開けば、傘は君を守ってくれる。僕が開けるのではない。君の手で開いて。誰かに強制されるのではなく、自分で決めるんだ」

少年は目を閉じ、やがて小さな声で言った。「でも…もし開いたら、誰かの記憶が消えるんじゃないの?」

ハンナが口を開く。「覚えておいて。記憶を失った者がいる、その事実は変えられない。で