新月市場の記憶鑑定士
掌が読む、消えた日々。
あらすじ
久瀬透は、物の傷跡からその歴史を読み取る鑑定士だった。ある留守電の震えた声を機に、彼はリオネルと名を変え、新月にだけ開く海底都市ノクタの市場へ足を踏み入れる。そこでは水晶片に記憶が封じられ、白環が事実を、黒環が感情を刻む売買が行われていた。透は、断片の中に残された弟のような声と、白と黒の間に差す“零日”と呼ばれる欠落を見つけ、ミナ、セレネ、ガルド、小獣ルゥとともに記憶の取引の裏を追う。倉庫や金庫での潜入、証言を繋ぐ試みを通じて、消えた記憶の輪郭を取り戻すか、それとも新たな犠牲を生むのかという葛藤が物語の中心になる。繊細な記憶描写と海底市場の異様な情景、仲間同士の声で欠落を埋める試みが読みどころ。