硝子砂漠の聴器師
声なき世界で、手は選択をつむぐ。
あらすじ
かつて補聴器を作っていた職人、真壁澄人の最後の記憶は白い線と硝子の荒野だった。その後、名をイオとした男は「音を返す器具」を作る職人として、音が消えた硝子砂漠の町で暮らす。世界は音の代わりに色と振動で語り、ミラや硝子職人ネネ、老技師トウガらとともに、壊れた返音器や欠けた耳飾りの断片を巡る仕事と倫理の判断に向き合う。軍は証拠の回収や杭の扱いを巡って介入し、黒紫の濁音や地下の共鳴が記憶を蝕む危険が常に横たわる。視覚と触覚で「聞く」ことを再構築する職人たちの技術と選択、そして封書に残された謎めいた波形が物語の核となる。