海上書庫の製本師
紙と糸で、忘れられた名を海に取り戻す物語。
あらすじ
小さな製本工房と十隻の書庫船を拠点に、若き製本師リオは「綴じる」ことで失われた名前や記憶を取り戻す仕事に携わる。海を渡る船団、文字を喰う霧、そして目録院の印章が示す管理の痕跡──仲間たち(活字彫りのガルド、暗唱者ミア、監察のセド、操舵のネネ)と共に、彼らは消された航海録や島民の名を写本として綴じ直していく。だが綴じる行為には代価と選択が伴い、逆向きの頁や分割された写本といった工夫は救済と警告を同時に生む。燃え残った焦げた赤い栞や、海底に眠る書棚の遺構が示す過去の痕跡が、リオたちの手と記憶を問い直していく。