反転空域の構造士
数値だけでは救えないものがある──荷重を読み、人を抱く者たちの選択。
あらすじ
橋梁管理の技師だった三枝透は、新しい世界の肉体で目覚め、荷重を「視る」能力を持つエド・ラグナとして生きる。旧市街の塔と心柱を巡る導線は、目に見えない力を一点へ集中させ、人々の記憶や命を秤にかけるように作用していた。王府の台帳には「記憶抜取」「燃料使用」といった痕跡があり、一部の者は数値として切り捨てられている。エドは台帳を手にした記録官イセラ、身体で街を読む大男バルト、母を探す配達少女ノアらと共に、計算と現場の感覚の境界で葛藤しながら、忘却と犠牲を強いる仕組みに抗おうとする。読みどころは、荷重視という視覚的な能力が示す“数”と、人々の声や足音が作る“場”との衝突、記録に刻まれた欠落を取り戻そうとする過程で明らかになる倫理的選択と緊張感だ。