調香の悪役令嬢は失われた名前を取り戻す
香りで文書を読み替え、失われた名を取り戻す。選択の代価と連帯の物語。
あらすじ
イリナ・モーヴは調香師として、香りを媒介に古い制度文書の解釈を当事者全員の合意のもとで読み替える力を持つ。舞台は廷の広場や古文書庫、夜の調香室などが交錯する宮廷都市。ここでは「断罪」の儀礼によって人々の名が香りと書類で抹消され、失われた名は当人の記憶や他者の呼称から切り離されていく。イリナの中心葛藤は、誰かを迅速に救うために自分の選択肢を代償として一人で払うか、時間と危険をかけて仲間と合意を集め制度の運用を変えるか──という選択にある。物語は公開儀礼や評定、書庫での調査、合意の場を巡る交渉と小さな抵抗の連環で進み、調香による記憶の呼び起こしや「名」をめぐる法と慣習の矛盾、代償と連帯の選び方が読みどころになる。